|
「紳士的賭博観測記録」 vol.56(07.06.17 UP!)
【挑戦】
クリエイターと呼ばれる人達がいます。
クリエイターという枠は意外と広く、実際のところ何をしているのか分かりませんけど、なんだか格好良さげに響きますよね。「ちょっぴり意味不明でカタカナの肩書き」という謎めいた感じが、人々の心をくすぐるのかも知れません。
クリエイト。間違っても、クリト●スが8個も装着された最新ダッチワイフとかではありませんし、バンドエイドや板東英●の類いではなく、「創造する」という意味らしいのです。ちなみに、想像だけで絶頂に達することが可能な人は「オ●ニーマスター」っていうのはどうでもいい。でも、私もいつか「無接触放出」を実現してみたいものです。
皆様もよくご存知のように、私の所属する会社はデザイン事務所です。このようなお仕事をしていると、周囲からは「クリエイティブだね」とか、「もっとクリクリして〜、ヒギィ〜!」なんて言われたりするものですが、恐らくそれはステレオタイプなイメージだけで、実際「ボクちゃんはクリエイティブでござる!」なんて思えません。まぁ、そう思い込んでいる人もいるかも知れませんが…。
クライアントがいて、発注をいただき、時間や費用の関係上、自ずと導かれる妥協点までデザインを作り込む。世の中に全く同じ広告物はありませんので、ある意味世界に一つしかない物と言えますが、それは視野を狭めて厳密に切り取った場合のこと。総体的に捉えると、所詮前例を模倣しアレンジを加えているだけに過ぎません。あ、これは私自身の事です。
例えば、ロックバンドには、ほとんどの場合エレキギターを演奏するギタリストがいます。稀に、粗大ゴミを利用した楽器を演奏するグループもありますが、半数以上はエレキギターで「ギュイーンギュイーン」と歪んだサウンドを奏でるのです。ガタイの良いメンバーは必然的にドラムス担当となり、一番地味、または長身のメンバーはベースへ。これがステレオタイプなイメージです。
ロックバンドを結成すると仮定します。すると、ボーカル、ギター、ベースにドラム、この4つのパーツが必要になるような気がしてきますよね。でもね、そんな基本構成の定義は誰も定めてはいないのですね。もしも、ビートルズやレッドツェッペリンのメンバー構成が事実と異なっていたら、現状のロックに対する認識や歴史・文化への影響も少しは変わっていたのかも知れません。
CCBのようにリンゴスターが歌っていれば、CCBは存在しなかったかも知れません。そうするとヘアカラーリングが市民権を得るのは数年遅れていただろうと、ある学会から発表されたのは記憶に新しいですよね。えぇ、キンアカ(※)なウソですよ。(※とっても赤いよ! という意味)
おっとっと、例え話が少々過ぎましたが、だいたいのものは前例を模倣しながら生み出されるという事なのです。でも、それがとても重要なのです。だって、今朝の朝刊に折り込まれたスーパーのチラシが、どこからどうみてもホストクラブのチラシにしか見えなかったら嫌ですよね。
黒スーツに襟がピョーンととんがったシャツ。しかも胸元からは汚い胸毛と金無垢ネックレス。そんな店長のイヤラシい流し目の傍らに、小さく「至福に包まれる甘美なトマト、98円…」とかね。そもそも最後の「…」は何なんだ、と。含みを持たせるな、と言いたい。キチガった奥さんは夢中になるかも知れませんが、多くの消費者は困惑してしまいます。
なので、スーパーはスーパーらしく、居酒屋は居酒屋らしく、という事が重要になってくるのです。それにより、業種によってある一定の表現パターンは固まってしまい、あまり突飛なものは作れないんですけど、広告を見る消費者に思いが伝わなければ、チラシなんてただの紙くずになってしまうのです。
まぁ、私のようなチラシ屋など、到底クリエイターと呼べる代物ではありません。なので、私の職業は「変態、副業チラシ屋」で十分でございます。
常々思うんですけど、広告業界の最先端で活躍されている方は、とってもクリエイティブなんだと思います。車や家電、アイドルやテレビドラマ。とても常人とは思えないアイデアを次から次へとカタチにしているのです。考えただけで股が濡れてしまいますよね。
しかし、世の中は広いようです。まだまだクリエイティブな人達がいるというのですからオドロキ・桃の木・樹木希林…じゃなくって、なんでしたっけ?
約一年半前、ある方との会話。
「俺達のようなクリエイターよりも、もっとクリエイティブな人間がいる。」
「それは第一線で活躍されている業界人ですか?」
「本当のクリエイション。それはある意味、“農業”だ。」
「ヌホヘ〜! 農家でございますか!? でも、あの方達はマッキントッシュとかは使われませんよね。夜な夜な、クリッククリックしませんよね。」
「Macを使う仕事がクリエイティブではない。よって、貴様はクリエイターの域に達していない。」
「がびーん。」
衝撃を受けた一言。枕をビショビショに濡らした一言。でも悲しさは微塵も無く、悔しさと無力さだけを味わうことができました。そして、今の自分に何ができるのか、ということを考えてみたのです。
仕事以外の何か。アートではない何か。大衆に向けた何か。
そんなことを悶々と考えて見つけた一つの答えがこの「放浪記」であり、その時に眠らせていた別案が「農業」でした(vol.46参照)。結果、第一に「放浪記」を立ち上げた訳なんですけど、やっぱりね、パチスロという趣味が直結しているものの方が作りやすく、なおかつ個人的に進行できるという手軽さも魅力だったんですね。
だって、農家の方を対象としたサイトを作るとしたら、何だか大変そうじゃないですか。実家が農家だった訳でもなく、第一次産業の事なんてほとんど意識したこともありませんでした。何をどう作って、大衆へ向けて表現していいのかなんて見当もつきません。これは一人ではどうすることも出来ないと思いました。
一人の力では、どうやっても一人分とちょっと。二人いれば三人力。そう信じて仲間を募ろうとも、なかなか上手くは行きません。否定する人間だけはしっかりといましたけどね。結果、すぐに行き詰まってしまい、企画自体を寝かせていたんですね。
そして今春、長く眠っていた企画を覚醒させる人物が現れたのです。
その人物とは事務所の新人君なんですけど、無理を承知の上で口説いてみたんですね。やっぱり、入社したての頃って、右も左も分からず、自分のチ●ポの向きも見失う程に大変な時期じゃないですか。チ●ポの収め方を間違えて、歩き方がおかしくなっちゃって、ウンコを我慢していると勘違いされるかも知れないじゃないですか。
まぁ、そんなことはどうでも良いとして、何事も最初が肝心だと言われています。三つ子の魂百まで、と先人の教えがあるように、初期に植え込まれた意識というものは、結構深い所まで根付くものなんですよね。
「私達のようなクリエイター気取りよりも、もっとクリエイティブな人間がいらっしゃるんらしいんですよ、ムヒョヒョ。(まずい、受け売りだこりゃ)」
「面白そうですね、その企画。ちょっと考えてみましょう。」
「え、本気で良いんですか? この計画ですと、休日もつぶしてしまいますよ。」
「良いですよ。でも、経験が無いんで、上手く行くかどうかは分かりませんけど。」
こいつは侍か、侍ジャイアンツか、と思いましたね。「自信がない」と言いながらも、ビビってはいない様子。未経験の物事に対して、もっと怯えて、もっとガクブルするのかと思いきゃ、なんだかワクワクしているじゃないですか。これはきっと、立派なマゾヒストに育ってくれるのかも知れません。
そして遂に、日曜日を利用して取材敢行してきましたよ。ここの読者様にとっての取材とは、「ホールに行く事」と認識されていそうですが、今回はもっとちゃんとした取材ですよ。カメラやレコーダーを持って、取材をお願いしていた農家の方の所へ車を走らせたんです。
出勤時刻よりも早起きをし、高速道路を北へ北へと…。メンバーの誰もが初体験で、車内では不安の声もありましたが、誰も不安げな顔をしていなかったのは、作品に対する期待やまだ見ぬ自分自身の能力への期待がそれを大きく上回っていたからなのかも知れません。
予め準備をしていた質問をするインタビュアーは「人見知り」の新人君。写真撮影は、ニコンの小さなデジイチを買ったばかりの変態キャメラマン。でも、この日だけは変態の帽子とマントを脱ぎ捨て、「一個でもニコン」という下らない発言も自粛し、一心不乱にシャッターをきりました。気付けば軽く200枚くらい撮っていました。5枚くらいしか使いませんけど…。
今まで一人だけで更新してきたこのコーナー。自己完結で構わない小さな小さな世界。でも、これからは協力者がいなくては実現できないことに取り組み始めました。より表現力豊かな表現者になるために。
少しだけ規模を広げただけでも、多くのものが必要となり、同時に多くのものが見えてくる気がします。この先、何が見え、何を表現できるのか楽しみです。
取材ホール/K市K町:【R】ある農家にて
プレイ機種/取材:取材投資7,000円 回収 取材原稿 |
|