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紳士的賭博観測記録
神出鬼没の変態紳士「やまさん」が贈る脳汁全開コラム。日夜「取材」と称しホール徘徊に勤しむ高純度のスロ中毒者。もしかすると、今夜あなたのホールに訪れるかもしれません。
「紳士的賭博観測記録」 vol.86(08.02.15 UP!)

【若き日の自分へ】

前回、自転車の安全運転に対する意識向上を図るという、壮大なコラムを掲載したところ、思いもよらぬ反応が多く寄せられました。


「脳みそ大丈夫ですか? 一度精神病院に行かれてはいかがですか?(チンカスマン/25歳)」

「遂に狂ったか。いや、加速したと言うべきかな。(なのは萌え〜/40歳)」

「ようこそ、こちら側へ。ようやく新しい世界が開けましたね。私達とともに、新たな時代を築いていこうではありませんか。(光円世界教/1500歳)」


うぐぐ…、寄ってたかって私の事をキ●ガイ呼ばわりするなんて、あんまりじゃないですか。

確かにちょっぴりだけ「キチ●イスパイス」を効かせている私ですけどね、骨の髄までイカレているわけではありません。心体ともに至って正常なわけでして、夜は正常位を基本スタイルとするほどに正常なんです。


そんなことより、ちょっと聞いてくださいよ奥さん。先日の自転車クラッシュ事故よりも、もっと大変なことが起きたんです。それこそ心体ともに大変だったんです。

実は、数日前このS市に寒波が襲ってきたんですね。それはもう寒い夜でした。パチンコ台にもなった昔のTKファミリーのグループが歌い出し、なおかつ踊り出すんじゃないかってくらい寒い夜でした。

道路はバキバキに凍り付き、肌を突き刺す強風が吹き荒れる中、私は自転車で帰宅していました。マウンテンバイクの極太オフロードタイヤを持ってしても、凍結した道路というヤツは厄介な存在でして、気を抜くとツルンツルンと滑ってしまうんです。

凍結時における自転車の恐怖と言えば、車道と歩道の間に存在する段差です。段差に向かって真っすぐ進めば滑ることは無いんですけど、斜めに進入すると高確率でスリップしてしまいます。

しかしそこは自慢の極太タイヤ。並の自転車とは訳が違います。タイヤのセンター部分だけでなく、ショルダー部分にまで深い溝が刻まれているため、相当なグリップ力があるんです。そのような過信のもと、スイスイッと歩道に乗り上げたんですけど、見事にスリップしました。


「くぅ〜、あいだだだだ〜」


起き上がって辺りを見渡すと、そこは明らかに別世界。そもそも、時間帯がおかしい。先ほどまで夜も夜、午前様だったにもかかわらず、今は明らかに日中なのですよ。しかも近くにあったはずの「サンクス」も見当たりません。


「ここ、どこなんでしょう…」


前回負傷した後輪に続き、前輪まで歪んでしまった自転車を近くに放置し、私は歩き出しました。周りの大半は田んぼばかりで、人や自動車はあまり見かけません。少し歩くと、古ぼけた駅が見えてきました。


「し、下●条駅ですって…。まさかここは、私の故郷…」


どうやら、転倒のショックか何かが原因で、本来存在していたはずの場所からワープしてしまったみたいなんです。でも、こんな事って起きるわけがないじゃないですか。瞬間移動なんて、マンガの世界だけに許される話ですよね、まったく。

あ、もしかして、生霊になってしまったとか。転倒したはずみで頭を強打し、意識不明の重体のさなか、意識だけが彷徨ったあげく故郷に辿り着いてしまった、というホラー的展開なのでしょうか。

うむむ、謎だらけです。とりあえず、周りの人間に私がどう映るのかを確認してみましょう。確かこの近くに、最近建った「ローソン」があるはずです。大好物の「なんこつつくね棒」も食べたいですし、早速行ってみましょう。


「…ない、ローソンがない。そんなバカな、おいちょカバな…」


そこに存在するはずのローソンが無いんですよ。これでは「なんこつつくね棒」が食べられないのではありませんか。取り敢えず、何か食べたくて仕方がないので隣のスーパーに行きました。


「いらっしゃいませ〜」


あ、店員には私が見えているんだ。ということは、私は生霊では無いことが判明されましたね。安堵しつつ、別にすることもなく暇を持て余した私は店内を徘徊することに。

小さい頃からこのスーパーにはよく来ていましたし、なんだか懐かしい感覚を覚えました。遠足のおやつを買う時なんかは、鬼の形相で立ち尽くし、軽く2〜3時間は悩んでいましたっけ。

懐かしいお菓子のコーナーを一通り見て回ったあと、惣菜コーナーに向かいました。何か適当に買って、友人宅で酒でも飲もうかと思っていたんです。


「ふむ、このイカの刺身が美味しそうでございますな〜。どれどれ、賞味期限は……97年10月2日ですって…。これはデータ入力ミスでしょうか…」


何かがおかしい。ローソンは無いし、賞味期限のラベルの数字もおかしい。誰でもいいから確認しなくては、と思い、買物に来ている近くのおばちゃんに声をかけました。


「あの、つかぬことを伺いますけどね、福田総理ってご存知ですか?」

「はい? フクダ? ソウリ? 総理大臣なら、橋本さんでしょ」

「あぁ〜橋本さんね。いや〜懐かしいですね〜」

「はぁ? 懐かしいって何を言っているの、あなたは」


なんてことでしょう。今時「橋本総理」なんて、覚えている人の方が少ないというのに、このおばちゃんは平然と「橋本総理」と行ってのける。イカ刺のラベルに書いてあるように、ここは本当に「1997年」なのでしょうか。

ということは、よくSF映画とかにあるように、私は「タイムスリップ」してしまったというのでしょうか。自転車でスリップしてタイムスリップ。そんな「ちょっと上手い話」みたいな、都合のいい話があっていいのか。

でも、もしも本当にタイムスリップしているとしたら、若き日の自分に会えるわけですよね。まぁ、タイムトラベルの掟として、「自分に会う」ということは「タイムパラドックス」を引き起こす可能性があるわけで、あまりオススメできることではないんですけどね。でも、滅多に無いチャンスですので会ってみようと思うのです。


ということで、私が通った某工業高校へやって来ました。とは言っても、校舎に侵入するわけにはいきません。私の身なりからすると、どう好意的に捉えられても不審者だと思われて通報されてしまいますもの。ここは一つ、校門で待ち伏せしましょう。

待つこと数10分。午前の授業の終わりを告げる鐘が鳴り響きます。学食へ向かう生徒とは正反対に学校を抜け出そうとする生徒の姿が見えます。そうです、午後になると高確率でサボるという私とその友人の姿でした。


「ちょっと君、やまさんでしょ」


なんだか自分自身に話し掛けるって奇妙な感覚ですね。


「なんだよ、オッサン。何か用かよ」

「(オッサンって…、しかしここは笑顔で…)ちょっとお話したいのですけど、よろしいかな?」

「なんの話だよ。ってか誰だよ、オッサン」

「(うぐぐ…、オッサン言うな!!)いやいや、君にとって大変重要なお話なのですよ」

「じゃあ早く言えよ、これからカラオケ行くんだからな」

「(このクソガキ…、勉強しろよ!!)心して聞いてください。まず、君はどうしようもないクズ野郎です。我慢もできない、努力もしない、遊んでばかりの糞みたいな男です。今考えている夢だって、あっと言う間に挫折するんですよ」

「なんだとコラ、言わせておけば…」

「(あ、顔を真っ赤にして怒ってる…)まだまだあるんです。君はバイクに乗っているんでしょう。これからは、もっと気を付けて運転しなければならない」

「するとなんだい? オッサンは未来が見えるのか? 未来人かよ、お前は」

「まぁ、そうとも言えるわけでして…」


すると、いつもつるんでいた友人のタカシ君が口を挟んできた。


「なぁ、コイツ危ないな。ちょっとシメとくか?」

「タカシ君は黙っていてくれませんか! 今はやまさんと大事なお話をしているんですよ!」

「こ、こいつ、オレの名前まで知っているのか…。やっぱりシメとくか」

「(やばい、コイツは空手をやっているんだった…、逃げなくては!!)では、皆様ごきげんよう〜」


高校生から必死に逃げる30歳手前の男。無我夢中で走り続け、気がつけば「倉●駅」まで来ていました。

さて、これからどうすれば良いのか、どうすれば元の世界までもどれるのかを考えなければなりません。しかし、その答えは簡単に出るはずがないと途方に暮れ、仕方なく街中をとぼとぼと彷徨うのでした。


駅前通りを15分ばかり歩くと、高校卒業後にアルバイトをさせていただいたパチンコ店「R」が目に止まりました。紳士記録vol.09に登場したお店です。


「今、この世界はニューパル全盛期ですか。ちょっと打ってみますかね」


入店すると、店内の様子はあの頃のまま。小汚い内装にガラの悪い客層。いや、客だけでなく店員のガラも悪い。煙草のヤニ臭い空気に包まれ、スロットのシマのある奥へと進みます。

現代の機種と比較すると、とにかくリールが見えづらく、そして当たり前ですけど演出もなにも起こりません。リールのスベリと出目だけでボーナスフラグを察知することがニューパルの醍醐味なのです。

もうね、こんな過去の世界に来てまで何をやっているのか、と自分自身を小一時間ほど問い詰めたいと思ったんですけど、5ゲームくらいでリーチ目降臨ですよ。ビッグ確定目ですよ。

そして、あれよあれよと言う間に2箱カチ盛り。昔のドル箱は割と大きいですからね。ざっと6万円の勝利です。ぐへへ、堪りませんな〜、辞められませんな〜。

相変わらず愛想の悪い換金所で景品交換を済ませ、駐車場の隅っこで一休み。さて、本当にどうしたものかと思案していたのですが、なんだか急に寒くなってきました。あれ、意識も朦朧としてきましたよ。風邪でもひいてしまったのでしょうか。

でも、バカは風邪をひかないって言うじゃないですか。ということは、もしかして私はバカじゃないのかも知れません。ぐひひ、嬉しい限りでございますな、まったく。

いやいや、そんな悠長なことを言っている場合じゃございません。本当に意識が遠のいてきました。そして寒い…、夜じゃないけど寒い夜…、TRF……。


「…うぐぐ、さ、寒い、寒い夜…だか…ら……」


気がつくと辺りは真っ暗で、灯りと言えば近くの「サンクス」しかありません。とすると、もしかしてここは元の世界なのでは。ようやく帰還することができたんですね。

しかし、よく見てみると、私の身体には雪がどっさりと降り積もっているではありませんか。一体どれほどの間、意識を無くしていたのでしょう。雪の量から察すると、ざっと3時間ほどでしょうか。


「あ、そうだ。さっき換金した6万円は…」


このコーナーでは恒例になりつつある「いつもの展開」が脳裏によぎりますが、淡い期待を胸に秘め、恐る恐る財布を開けました。


“ドリンクバー30円引き”


結局これですか、そうですか。



過去を消すことも、変えることもできません。ただ一つ言えることは、安全運転を心がけましょう。




取材ホール/K市H町:【R】田舎のパチンコ屋
プレイ機種/ニューパル:取材投資1,000円 回収 ドリンクバー30円引き
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