ほら、あなたの隣。
その彼が私かもしれませんね…


vol.52(07.05.20 UP!)

【独りなんですけど】

「ただいま…」

いつものように玄関のドアを開けると、いつもとは違い部屋は真っ暗。今日も私の家に妻は居ない。

家に着く時間帯は深夜。テレビジョンは「試験電波」や「天気予報」が流れている。仕方なく電源を落とすと、静まり返った部屋には電子レンジの機械音が響くだけ。そして、冷凍食品に向かって「いただきます」と独り呟くだけの夜。


(何日目くらいだろう、誰も居ない自宅に帰るのは…。)

電子レンジでしっかりと温めたはずなのに、何故か「冷たい」冷凍食品を口に運びながら、そんなことを考えていた。

何日くらい前からだろう。三日、四日、いや一週間になるだろうか。曖昧になった記憶を必死に辿る。途切れたパーツを少しづつ繋げていく。


「一週間程度、実家に帰ります。」


そうだ、この言葉から始まったのだ。妻は確かにこう言い残し、家を出たのだった。そして、そろそろ一週間が経とうとしている。

しかし、何故だろう。事の経緯が思い出せない。思い出せないのか、思い出したくないのか、それすらも分からない。原因に結びつく糸を辿ろうと試みたが、それもすぐにやめた。

妻が実家に帰る。よくあるシチュエーションだ。そして、その原因の多くは駄目な亭主だと相場は決まっているものだ。

隠していた借金が公になってしまったり、浮気の証拠を押えられたり、不平不満が積もり積もって、ダムが崩壊するかの如く怒りと悲しみが溢れ出たり…。

私は、自分自身が原因であることに行き着くことが恐くて、情けなくて、ただ膝を抱えていた。そして、考えることをやめ、明るくなっていく空をただ眺めていた。


「早く寝なさいよ。また遅刻するわよ、まったく…」


いつまでも子ども扱いされているようで嫌だった小言も聞こえない。心のどこかで、まだ子どもでいたかった部分があったのかも知れない。

それも原因の一つである可能性が見え隠れしているようで、自分自身への苛立ちを布団で覆った。頭から覆った。



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