ほら、あなたの隣。
その彼が私かもしれませんね…


vol.99(08.06.06 UP!)


「北海道から新鮮直送!」

「茹でたてのカニがどどんと4kg!」

「大人2〜3人では食べきれないボリューム!」

「思う存分ペロリンチョ!」


メールを開くと、そこには魅惑的なフレーズが所狭しと踊り狂っていたんです。なんでも、「カニ祭」と称された催事の招待メールだったんですけど、肝心の開催場所が記されていないんですよ。これでは、参加したくてもできないじゃないですか。

そして、悶々としながらも仕事を終え、自宅にいる妻にこのメールの話をしたんです。


「このような怪しさモリモリのメールが届いたのですよ。でもね、参加方法が1ミリグラムも分からないのですよ」

「返信すれば?」

「あ、天才発見。バカと天才は紙一重って言いますしね。」


あいたたた。多分、歯の一本くらいは逝ってますね。まぁ、問題解決への糸口は見つかったわけですし、早速返信メールを送ってやりますよ。

カニ紳士からのメールを開き、返信をするために送信元アドレスをクリックしました。そして、そのアドレスを見て不思議に思ったんですけど、なんだか見覚えがあるんですよね。それもそのはず、送信元が私のアドレスだったのです。

なんじゃこりゃ、って思うじゃないですか。身に覚えのないメールなんですけど、確かに私が送ったメールらしいのです。なんたって、何の臆面もなく「ペロリンチョ!」とか平気で宣うくらいですからね。

これってもしかして、あの有名な夢遊病とか、多重人格とかの類いなのでしょうか。カニが食べたい人格と、経済的理由から我慢しなければならない人格が死闘を演じた後、前者がひょっこりと現れたということなのでしょうか。

マズい。マズすぎる…。

この事実を妻に知られようものなら、もう一本くらい歯が逝ってしまいます。私たちの知らない世界に召されてしまいます。でも、これを隠し通すこともできません。なにより、隠すなどという行為は紳士的ではありませんからね。


「あ、あの、実はこれ、私だったみたいなんですけど…」

「はぁ?」

「ですからね、私の人格がですね、カクカクシコシコ…」

「ふ〜ん、了解。」

「ややっ! 鬼の目にも涙ですな〜」


あいたたた。多分、もう一本くらい歯が逝きましたね。まぁ、無事に問題解決したことですし、存分に「カニ祭」を楽しもうではありませんか。もうね、ペロリンチョですわい。



妻の半分は優しさでできています。




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